1 風の轍
ソロアルバム「木精」のB面は東京で暮らし始めた僕が
大袈裟に言えば「自分の心を自分で旅する組曲」とした
心象風景を「風の轍」からスタートさせた。
今も思い入れのある曲だ。
幼さと繊細さが自分の青の時代を思い出させてくれる。
職業作家ではないので、今はもう書けないし書けば嘘になる。
2 ただひとりの人(new Recording)
SONYを離れ、自身のレーベル「HarvestMoon」を立ち上げた時に
その第一作目のアルバムが「HarvestMoon」だったそして
そのOpeningの曲が「ただひとりの人」だった。
「今ならこんな風に唄いたい」との僕の思いを河合さんが
上手くサポートしてくれた。ヴォーカルってのは奥が深い。
ますます欲が出てくるが、たどり着く終点はない。
3輝く朝に(new Recording)
レコーディング中に連続テレビドラマ「花友禅」の主題歌になる
ことが決まったので、デモテープよりも派手なアレンジにした。
今回は関さんに元のイメージにリニューアルしてもらった。
いやいや、もっといい。
4忍びよる秋に(new Recording)
成熟したラブソングというものがあるとしたなら、それはフランクシナトラのそれだと想像し自分には遠いところにあるものと
思っていたあの頃から、もう30年以上が経ってしまった。
シナトラになりたいというのではなく、そろそろ僕も
そんなシンガーを目指したいと思い始めている。
プロローグを含め、妹尾さんのピアノが後押ししてくれた。
5午前零時(new Recording)
渋谷や原宿で飲み始めたころ、深夜のネオンと暗闇から漂う
匂いにはたくさんの物語が息をひそめてうずくまっているように
思えた。地方出身者の僕の妄想が描き出した「午前零時の舗道」
久保田さんのエレキのリフがアーバンな気分を作ってくれる。
消えそうになるのはあなたでもあり、
都会の夜にうずくまる自分でもあり・・・。
6作品A(new Recording)
大学時代やデビュー当時ロックだと思って聴いていたイーグルスやニッティグリティ、ジャクソンブラウン、イアンマシューズなどは、いま思えばカントリーミュージックの要素が強い。
だから僕も自然にカントリ−サウンドが大好きという訳で・・・。「作品A」は当時よりもぐっといなたくして貰った。
しっくりと来るタイトルが見つからず、レコーディング中は仮で
「作品A」と呼んでいたら、そのままタイトルになってしまった。
あなたならこの曲にどんなタイトルをつけますか?
7時の足音
日本韓国同時発売のアルバム「まなざし」は70年代の韓国のフォークソングを僕がカバーするというものだった。
選曲は僕にまかされたので、韓国のフォークをたくさん聴いた。
その中からこの「時の足音」を見つけた。
オリジナルはビートの効いたハイテンポな曲だったのでテンポを
かなり落とした。今回はそれよりもぐっとテンポを落としたので、止まって聞こえるかもしれない。
8 初恋
映画「卒業」のラストシーンや早川義夫さんの「サルビアの花」に登場する教会でのシーンには日本の風景はどこかしっくりしない。
僕は60年代にブームになったイタリア、フランスの青春映画を
重ねて見た。なのでこの歌の主人公は決して僕ではないのだが、
花嫁衣装の女性は「ジョアンナシムカス」でお願いします。
妄想です。
9ふる里に帰ったら
ふる里が懐かしいから、恋しいから帰りたいのではない。
今自分がこうしている場所は自分の望んだ場所なのだろうか?
自分が行きたいと思った場所はここなのか?と誰もがそんな風に
問いかける時があるのではないのかな? 僕にはあった。
10 高き空 遠き夢
こんな歌を作ったんだ、へぇ~。と今なら思える。
鳥よ、翼を止めなくて良かったね。
遠くまで君を運んでくれた、たくさんの風達のお陰だね。
出来たばかりのこの曲のデモテープを朝になるまで
聴いていた日のことを記憶のどこかで忘れない。
11風の螺旋
僕が10月生まれだからという訳でもないが、
僕は秋の風景が好きらしい。哀しみさえ潤んでる。
切なささえドラマチック。僕は秋を美化してる。
それほどに全てを赤に染める季節は幻想的だ。
愛も傷も忘却のうちの埋没するものだとしても
絶対に忘れたくないこと、忘れられないことのひとつふたつを
僕らは歩いて来た道の途中で拾って来たはずだ。
12エレジイ
僕らは出会いのときめきと別れの寂しさの両方を味わう。
いつもそれは気まぐれな割合でやって来た気がするが、
この年齢になっては仕方のないことなんだろうけれど、
最近は別れの寂しさのほうが多くなって来た。それも永遠の。
「人生は悲劇かそれとも喜劇か?」とよく言うが、
人生は奇跡だよね、とつくづく思う。
13 ひとりの君へ
記念すべき細坪基佳の初シングル「ひとりの君へ」
この曲は思い入れと思い出が溢れ出ます。
あの頃、作曲する時は大きなラジカセの前に胡座をかいて
何かが閃くまで嘘日本語や嘘英語でギターをかき鳴らしながら
延々と唄ったものだが、「ひとりの君へ」は嘘イタリア語だった。なぜならカンツォーネを作りたかったから。
あの心のままに歌い上げる下世話?さが大好きだった。
14 Autumn Morning
愛し合うもの同士は、いつか生き方も目指す方向もひとつに
なって行くのが理想だと思っていた。それが愛だと思っていた。
だけれど、もともと自分と違うからこそ惹かれ合ったのだし、
みんなが同じなら世界はひとりでいいと言うことになる。
僕と違うあなた・・・少し似てるね、くらいが丁度いい。
15セクシー
「恋してる それだけで風の匂いもセクシー」
このフレーズが普通に理解してもらえて嬉しかった。
風の匂いも、星の瞬きも、それらの現象は、愛でることの出来る
僕らが生きているからこその美しさなのだ。
森羅万象にときめき続ける僕らは、いくつになってもSexyだ。
今こうして生きていることこそがSexy。
君だけを暖める煉瓦色のペチカ・・・。
このアルバムがあなたを温めるペチカでありますように。