ホテルに戻り早めの就寝。
コンサート当日は爽やかに目覚め、
バスタブにお湯をためて教則CDを流しながら
いつものようにノドのストレッチをする。
今年最後のコンサートだ、念入りにストレッチ。
良い感じにノドも柔らかくなったので終了。
1時間ほど経ったろうか、
リハーサルには間があるので軽くXmassongの練習でもと思い
ベッドに座ってギターをかかえる。
唄い出す。
あれ?
声が出ない。
あり得ないほど声が出ない。
お腹に力を入れて絞り出すようにしても
声帯が細かく振動せず、壊れた滑車のように
ガラガラ言うばかりだ。
マジあり得ない!こんなこと初めてだ。
現実とは思えないので、何度も何度も咳払しながら
声を出してみる。
少し休んでは「ひょっとしたら治ってる?」と
こっそり声を出してみるがやはり出ない。
今度はむかついて、思い切り大声を出してみるが
やはり音程さえ判別できないガラガラ声が
堅くなった声帯をこすりながら空しく漏れてくるのだ。
あり得ない!
驚きは次第に恐怖に変わる。
大丈夫か、おい!
あと数時間でコンサートなんだけど。
1時間ほど、声を出したり、休んだりを繰り返していたが
一向に良くなる気配がないので遂にマネージャーに電話した。
「声の調子が悪い。ヤバい。リハを早めにしようかな。」
ガンガン唄えばきっと何とかなると思っていた。
いつもそうやってきた。
マネージャーもそれほど深刻なトラブルだとは
この時点では思っていなかったかもしれない。
わたしもだ。
そしてリハーサル。
演奏するも唄にならない。
都留さんも久保田くんも「どうしちゃったの?」といった
表情から数曲ガラガラやっているうちに
「ほんと、大丈夫?」な顔に変わる。
これは、コンサート中止も視野に入れなければならない
事態と言う事だ。
本番まであと数時間ある。
病院に行きたいけれどどこか知らない?と今西に相談。
今日は土曜日なのでどこの病院も終わっていた。
ならば、救急病院に行こう。
今西が探し出してくれた大学病院に急遽二人で向かった。
まだ見ぬ先生よ。わたしの救世主たれ!と祈りつつ。
病院の受付をすませ、しばし待合室の椅子にすわる。
「噛まないで飲み込むように食べたらノドが開くんちゃう?」
今西がコンビニで買って来てくれたおにぎりを
何回かに分けて飲み込む。
「細坪さん、どうぞ。」
わたしは希望と不安を胸に診察室へ向かった。
お笑い芸人の「あばれる君」が白衣を着けた様な感じの
若い先生の前に座り、少しでも判断の材料になればと
今の症状と状況を丁寧に説明した。
「では、口を開けて下さい。ちよっとみましょうね。」
「あぁ、少し赤いですねぇ。」
「はい、いいですよ。」
「で、先生。どうしたらいいでしょうか?」
「これは直ぐには治らないかも知れませんねぇ。」
「でも、これからコンサートが・・・。
何とかなりませんか?」
「そうですねぇ。コンサートの直前まで
しゃべらないでいてください。はい、どうも。」
おそらく耳鼻咽喉科、気管支、アレルギー系は専門外みたいな
あばれる君は治療も薬もなしで、
屁みたいなアドバイスを、ひとつわたしにくれたのでした。
気の抜けた気分で、会計へ。
「保険証がなければ、実費でおねがいします。
19、800円になります。」
はい?
あのアドバイスだけで?
通販だったら、間違いなくクーリングオフやで〜!
京都のみなさんや今日のコンサートを楽しみに
わざわざ京都まで来てくれたファンの皆さんには
大変申し訳ないことですが、2016年最後のコンサートは、
私のノドが壊れたことでやむなく中止という判断を
せざるを得ない事となったのです。
ホントにごめんなさい。
せめてコンサート中止の報告は
自分でさせてもらいたいとの思いからみんなと相談して、
他に「都留&久保田ミニリサイタル」
「東寺の橋詰和尚のためになるミニ講話」
「Xmassongコーナー」を含めた1時間弱の
ミニコンサートを用意させて頂きました。
メンバー様、スタッフ様の対応&強力に深く感謝いたします。
そして、今西の速やかな判断でコンサートは
延期と言う事にし、後日同じこのホールで行うこととし
振り替え日は「2月24日」と決定しました。
仕事が早い。
翌日、再び美しい冬の富士山を見上げながら
2月24日は細坪「完全復活」で挑むことを誓うのでした。
「京都リベンジマッチ」絶対に見に来て!
東京に戻り、アップフロントの本田さんの紹介から始まり
3件の専門病院を渡り歩きました。
そんな病院でのエピソード・・・・
「塩化亜鉛の話」や「ビタミン点滴」や「ミンティア」や
「はなクリーン」の話はいつかどこかのコンサートで
聞いてくださいね。
ホント、京都での写真が一枚もない。
それどころではなかったもなぁ。
東京ではNature2017のリハーサルが待っている。
サービスエリアにて
小鳥が寄ってきて何故か私から離れない。
私が歩く方についてくるのです。
周りにはこの小鳥だけ。
君は僕の友達?
人慣れしていてエサが欲しかっただけさ。
じゃ、淋しいでしょう。
小鳥を愛おしく思いました。