中村君のご家族から譲り受けたギターは
ヤイリで作られた特注のギターだった。
しばらく使っていなかったらしくて
ギターマイクは取り付けられていなかった。
いつか僕がステージでこのギターを使う
機会が訪れることを考えると本体の
メンテナンスと一緒にピックアップマイクの
取り付けが必要になってくる。
そこでヤイリギターと親しくしている
中村君の友人マスミ君に連絡をしてみた。
ギターの話をすると、こんなことを言った。
「あぁ、あのギターはツボさんのところに
あるんですか、それはよかったです。
どこに行ったのか気になっていたんです。」
天野君そして中村君へと受け継がれた
ギターはいま僕の元に辿り着いた訳だ。
マスミ君に聞いてみた。
「ところで、このギターの職人さんは誰?」
「あっ、ヤイリの松尾さんが作りました。」
マジか、松尾さんと言えばずいぶん昔のこと
突然名古屋の僕のコンサート会場に現れて私に
「細坪さんのギターを作ってきました。
ドレッドノートボディのギターは
細坪さんの体型には大きいんです。」と言って
ヘッドに貝殻で「あやめと蝶」を装飾した
小ぶりのギターをプレゼントしてくれた。
それが松尾さんとの最初の出逢いだった。
「ヘッドの貝細工の蝶とアヤメはきれいだねぇ。」
自分でデザインしたの?」
「はい、仏壇の扉の模様を自分なりに・・・」
以来私はこれを「仏壇ギター」と呼んでいる。
仲良くなった頃松尾さんがある日、
「何か欲しいギターありませんか?僕作りましょう」
と言ってくれたので、しばらく考えて
「アマチュア時代にさ、札幌でドノバンの
弾き語りコンサートをみたんだけどね、
その時にドノバンが座布団に座りながら
つま弾いていたギターがね、ボディに
星をちりばめていてホールが円形ではなく
ハーフムーンにくりぬいてあったんだ。
ボディの黒に映えてまるで星空のような
そのギターがとても美しくてね。」
「作りましょう、それ。」と松尾さんはすかさず
そう言ってくれた。
音質、弾きやすさの追求ではなく、それは
僕のファンタジーだった。
蠍座生まれの僕は星ちりばめるのではなく
アンタレスの赤を生かした蠍座にしてもらった。
なので、完成したこのギターの名前は・・
そう、「蠍ギター」
仏壇、蠍ギターと天野中村ギターが同じ
ギター職人の手によるものだったとは。
奇遇なつながりがうれしかった。
マスミ君は話を続ける。
「ツボさも、ヤッサンも参加した六甲の
野外イベントの時に直接天野さんに
依頼されて、4度くらい打ち合わせで
東京に行ったり、何本か試作して天野さんに
弾いてもったりしながらじっくり
時間をかけて出来上がったギターらしいです。
天野さんがうれしそうにそのギターを
抱いている写真がありますよ、見ますか?」
そんなわけで、ヤイリの松尾さんから、
メンテナンスが終わったギターが
我が家に届きました。
これも奇遇だけれど、この
「天野中村ギター」を弾いている天野君と
僕は以前テレビでの共演を果たしていた。
マスミ君情報で知ったのだが、天野君と
ふきのとうとで「初夏」を唄っていた。
YouTubeの動画を見て「あぁ~懐かしい~~~!」
鎌倉のコンサートあたりに
このギターを連れ出そうと思ってる。