この日は緞帳を使ってのスタート。降りきっている緞帳の中で
一曲目のイントロが始まる。そして4小節目あたりになったところで緞帳が上がり、客席の皆さんと初めてご対面という構成になっていた。70年代の日本ではではよくあったスタートだったのだろう。
イーグルスやビージーズなどの来日アーティストのステージでは
緞帳はほとんど使わない。それが新しくてカッコ良く見えた。
そんな感覚が芽生えて僕も緞帳を使わなくなった。
だが、時代は一周して昭和感溢れる「スリーハンサムズ」には
緞帳がとても似合う気がしてる。
リハーサルを終えて1時間半後、本番10分前にメンバーが三々五々楽屋からステージに集まりそれぞれの定位置で準備をしていると、
本番2〜3分前になったあたりで上手からマネージャーが
「そろそろいきま〜す!こちらから合図を送りますので、その後にカウントを初めてください、お願いします。」と僕らに伝える。
今日の一曲目のカウントをするのは僕の役目だ。
最終チューニングをしていた僕は「そろそろ時間か。一曲目の
テンポをもう一度最後に確認しておこう。」とチューニングの後
声に出してカウントを確認し始めた。
「ワン!ツー!・・・」待てよ、なんか変な殺気を感じた。
カウントを途中で止めてまわりに視線を巡らせた。
僕以外のメンバーが身体を硬くして、遅れてなるものかといった
風情で楽器を構えて僕を睨んでいた。
そうか、今の練習のつもりの僕のカウントが、前触れもなく突然
始まった本番のカウントだと判断して身体が素早く反応し、
いつでもイケる戦闘状態になっていたのだった。
危ない、危ないカウントを途中で止めて良かった。
とんだフライング事故になるところだった。
みんなの顔を見ながら「びっくりしたぁ。」といったら、
中村が代表して「こっちの台詞だわ!」と言った。
本番直前のそんなハプニングが、久し振りとか、コロナとか、
中村の体調のことだとかを、ひととき忘れさせてくれて一気に
普段のほどけたスリハンにしてくれた。
いえ、この日のコンサートは、ほどけ過ぎたかもしれません!