顔を出したよ。懐かしいねぇ。
マンドリンの隣にある本は、30周年を節目として最初で最後の
「Good Time Music」という僕の写真の多いエッセイ集だ。
伝説のカメラマン「田村仁」さんの「ツボさん、折角だから作っちゃおうよ、おれが全面協力するよ。撮影ロケに行こうよ。」
「そんな大げさな!」とわたし。「いいっすよ。作りましょうよ。このメンバーなら凄いの出来ますよ絶対!」と乗っかって来たのはデザイナー&ロッカーの萩一訓クンだ。
30周年の為の「CD&DVD」の制作に関わってくれたカメラマンとデザイナーの言葉に背中を押されその気になった私に
かさにかかって「洋書の雰囲気でね、使用する紙も光沢紙ではなくざらつきを感じさせるマガジンのイメージはいいと思うなぁ。」「ロケは伊豆大島なんかどう?こないだみゆきの写真録りで行っんたけど、そのときはヘリをとばしてさぁ・・・」
「・・・いやいや、そこまではちょっと。」と思いながら
僕もだんだんワクワクしてきた。
そして予算のことも頭をかすめつつその気になる私であった。
楽しい、楽しい、充実した、そして絆の深まった
二泊三日の伊豆大島のロケであった。
その後、勢いに乗ったタムジンさんは都内でも数カ所
撮影の案を出してくれ自らロケハンしてくれたのだった。
30周年記念グッズはそのほとんどがお陰様で完売したが
この一環で制作したエッセイ「Good Time Music」はその一部が
いまだに事務所の棚に綺麗なままひっそりと置かれている。
ネスプレッソのローマをダブルでミルクと共にマグカップに注ぎ、
その一冊を手に取り、久し振りに読み耽った。
「小っさいなぁ。」が最初の感想だった。
だいたいデザイナーの萩くんは、文字を小さくしたがるのだ。
その方がデザインが生きてくるのもわからんでもないが、
私の音楽を好んでくださる皆さんの「平均年齢」に寄り添った
「文字の大きさ」を忖度することは「有能なデザイナーの心意気」
ではないだろうか。そんな攻防からすでに15年という月日が
流れたが、今回の「45周年記念」のもろもろの作品の
萩デザイナーの忖度は見事である。
その上で素敵なデザインに仕上がってますよ。お楽しみにね。
読書用眼鏡をかけて読み進む。
それは大学1年か2年の私の「日記」から始まっていた。
アマチュアコンテストに初めてフォークグループ「メロディ」
として出場するあたりの事が書かれていた。
どうやら、私はまだ真面目に大学に通い、試験の為の勉強も
友人宅に止まり込みまでしながらやっていたようだ。
目の細いロン毛のあどけないわたしが浮かぶ。
「ふきのとう」解散コンサートツアーの事にも触れていた。
「僕が感じたのはそのことなんだ・・・
参加したスタッフ全員が、今日までの自分のやってきたことが
一体なんだったのかをこのコンサートにぶつけている。」
「今日は「エバーラストコンサート」の最終日。
まだずっと先だと思っていたら、ヤッパリやっぱりその日が来た。
と言い、その日一日の出来事を綴っている。」
自分の事なんだけどその時の様子が今は俯瞰で眺めることが出来る。
いいねぇ、いいねぇ、愛おしいねぇ。
解散後初となるソロコンサートは浜松の小山兄ちゃんが
仕切ってくれた。この本では「このコンサートのおかげで
一皮むけた。」と書いてあるが、後日、仲良しの「ドカティ」の
キミちゃんが、あの日の事を笑いながら、
「ツボさん、見た事無いくらいガッチガチだったよね。」といってまた笑った事を思い出す。確かに文面にもやせ我慢が見て取れる。
沖縄で魔のヤギ汁を食べその後のコンサートの事にも触れていた。
サントリーホールで、「追想」を唄ったんだねぇ。
そうか30周年コンサートはふるさと深川、ひとり暮らしを始めた札幌、そして30年暮らした東京でのコンサートで一括りに
という気持ちだったんだ。ふむ。ふむ。ふむ・・・。
「忘れっぽい」というのも悪いことばかりではないようだ。
何度か読んだ本なのに、とても新鮮に感じてしまった。
2杯目のネスプレッソダブルを飲み終えて、帰り支度を始める。
今日は、普段出来ない事務所の整理をやろうと思って来たのにね。
何もしてないわ。
「Good Time Music」・・
そうは言ってもずいぶん皆さんに買っていただいた。
よく見ると意外に在庫あと少しだ。
発行部数が多いのは鼻から承知で印刷したのだから。
タムジンさん、萩クン、スタッフ達との制作時期が懐かしい、
確かに「贅沢な本」を作ったけれど、こうして手にして見ると
僕にとっては「一枚のCD]」分の重みが感じられる。
ちなみに「45周年」の作品のカメラマン、デザイナーも
「30周年」と同じメンバーです。