アマチュア時代、札幌のライブハウスで
唄っていた。その店には歌集があって、
その中の曲をお客さんのリクエストを
受けてみんなで唄うのだ。
「遠い世界に」「風」「誰もいない海」
ある日お客さんが「これを唄って欲しい」
と、アルバムを差し出した。
「断絶」というアルバムだった。
井上陽水という名前を初めて知った。
その時代は洋楽を聴くのが流行りで
邦楽は「ハッピーエンド」「ガロ」
ぐらいしか持っていなかった。
何日か経って下宿でそのLPに針を落とす。
衝撃だった。歌唱力、楽曲、アレンジ。
特に「傘がない」にやっつけられた。
以来、ライブハウスで僕は陽水をよく
唄うようになった。全曲をアレンジして
いるモップスの「星勝」という人にも
強く興味を持ったのだった。
で、デビューして数年が経ったある時
福岡の「一心亭」にひとりで行くと、
やはりひとりカウンターでラーメンを
すすっているロングヘアーの男がいた。
背中越しだったが、見覚えのある横顔。
「あっ星勝さんだ、へぇ星勝さんだ!」
テンションアゲアゲだが面識はない。
どうしたと思う?
星勝さんがラーメンを食べ終わる頃合い
を見計らって挨拶に行ったさ、ワタシ。
その時にもらった電話番号に連絡を
させていただき、制作開始間際だった
ソロアルバム「木精」のレコーディング
に加わってもらうことになり
「激しい雨」のアレンジをしてもらった。
他の曲はもう瀬尾さんと石川さんに
お願いしていた。「木精」・・・
今でも僕の大切なアルバムなのだ。
久しぶりの「一心亭」で豚骨スープの
懐かしい味わいと一緒にそんな思い出が
優しく浮かんで来るのでありました。
また「激しい雨」唄うかな。