皆さん、いかがお過ごしですか?
昼夜逆転の細坪です。
本日の東京は雲ひとつ無い青空が広がり、
清々しい春の日射しです。
この季節、本当ならば入学シーズン。
ぴかぴかの新入生が爽やかに、
街を通り過ぎる風景が日常なんですけどね。
・・・アイツさえいなければね。
僕も遠い日のこんな季節に、ずっと一緒に暮らしていた
両親のもとを離れて札幌での新しい生活のために、
アパート探をしたことがあります。
不動産屋さんに地図を渡され
「むこうと連絡が付いていますから。」と言われ、
ひとり路面電車に乗って郊外のアパートに向かった。
内見のために行ったアパートの一室には、
まだ住人が住んでいました。
8畳間のワンルームを玄関越しにぐるりと見渡して、
軽く会釈して出て行こうとする僕に
ベッドで横になっていたその部屋の住人は話しかけて来ました。
「僕は今年3回目の受験に失敗してね、ここを引き払って
田舎に帰ることにしたんです。両親もそうしなさいと言うし、
この椅子も机もファンシーケースもよかったら使ってください。
全部置いて行きますから。」
「あっ、あなたも小林麻美が好きですか?よかったら
これもどうぞ。」と壁に貼られたアイドルの大きなポスターに
目線を送っていた。
僕は・・この部屋での新しい生活をイメージ出来なかった。
「そうだ、外に出ません?案内しますよ。美味い定食屋さんとか、玉が良く出るパチンコ屋さんとか。」その誘いに、
僕は上手にお断りをしたつもりで表に出たが、アパートの住人は、
「その辺まで送りますよ。僕も買い物もあるし。」」と言いながらぼくの隣に並んで歩いていた。
「実は受験に失敗した時、もう死んじゃおうかなぁ、と思ったんです。」僕は、子供心になんかこの人凄いこと言い始めちゃったなぁと、痩せた青みがかった横顔に少しばかりぞっとした。
そして思った。「幽霊なんじゃない?」