自転車で散歩中に 通りかかった
古本屋のワゴンに、若かりし頃に
読んだとおぼしき作家の
エッセイ集のタイトルをみつけた。
正確にはタイトルではないが
五木寛之の「心の散歩」という随筆の
帯にあった「 今日も 風に吹かれて」
の 一行が心を引いた。
五木寛之の70年代のエッセイ集の
タイトルが確か「 風に吹かれて」
Bob Dylanへのオマージュだと思われる。
パラパラとめくってみると続編と
言うわけではなくコロナの期間に
執筆されたもののようだ。
「さらばモスクワ愚連隊」
「蒼ざめた馬を見よ」
「青年は荒野をめざす」
本のタイトルを羅列すると
6畳1間の屋根裏部屋の風景と
甘酸っぱい僕の青春が蘇る。
仏教をテーマにした本や人生訓などの
随筆に重きを置くようになった頃から
僕は五木の本から離れていった気がする。
挫折の五木寛之
UFOとインドと夢日記の横尾忠則、
破天荒な筒井康隆、王道の小松左京
ちょっと エロい江戸川乱歩と
夢野久作らは僕の少年時代の
大切なアイテムだった。
その本を手に取って見ると「100円」
という値札シールが貼ってあった。
いちど必要とされなくなった本が
100円と言う値打ちでもう一度
世に出る。残念と言うよりは
とても素晴らしいことに思えた。
僕が作ったり唄ったりした曲達が
どんなに安価であれ、いつの時代でも
必要とされるとしたら
それはとても素晴らしいことだなぁ。
購入したばかりのエッセイ集を持って
コーヒーショップに入ってみた。
濃いめのカプチーノを飲みながら
ページをめくる自分が急に
恥ずかしくなり15分で店を出た。