話し始めてステージを作ってくれるはずだったから。
おや?妙な間がホールを包んでいる。おそらくこの場面は中村が
話し始めてくれることになっていたはずだ。ぼくはこっそり中村を
見た。中村は我関せずなたたずまいでそこにはこれから何かを話し始めようとする気配は微塵も感じられない。そこで僕は今度は
平賀をみた。平賀も自然な感じで担いだベースを左右に振りながら何かを待っている風だったのだが、敏感な平賀は僕の視線に気が付いて、「えっ?おれ?」という口の動きをして相当慌てているように見えた。やっぱり平賀だったのかと確信したぼくは
「そうだよ!」と声に出した。「おれだったかなぁ」と言いつつも
体制を立て直しステージをスムーズに作って行った。さすが!
終了後、「本番前に打ち合わせが無かったから慌てちゃったね。」と言われたが、僕はリハーサル前にメールでMCの場所に名前も記入した曲順表を送っていたはずなんだがなぁ。
中村は疲れも感じさせず笑いながら「平賀の「えっ?おれ?」って言う時の顔が面白過ぎて笑いが止められなくて大変だったさ」と
ずっと笑っていた。 中村が元気なのもおおきな収穫だ。