左手の時計

​仲の良いイベンターさん達と一緒にアジアに
旅行に行ったことがある｡
お土産屋さんを通りかかるとなんちゃって
ブランド時計が 並べられた一角があった｡

｢ この時計かっこいいけど私にはちょっと
派手ですね｣ と今西さんがポツンと言う｡
シルバーがまぶしい フランクミューラー風の
キラキラした時計だった｡
｢ 普段遣いは難しい かもしれないけれど
真夏のプライベートにはこういうのを
1個持っていても楽しいんじゃないの｡｣
私の一言に 弾みがついて｢ 確かにそうだねぇ｡｣
と､今西はその時計を買い求めた｡

旅行から帰ってきて何ヶ月経ったろうか?
｢ 京都に帰ってきてあの時計を眺めていたん
ですが､さすがに私には 京都でこれを
つけるのは無理があるような気がします｡
ツボさんならこの時計 似合うと思います｣

そんな訳でこの日私の左腕に巻かれている
シルバーの時計は本当は今西さんのなのです｡
そうなんです｡余計なアドバイスしておいて
結局私がもらっちゃったんです｡

以来､夏になるとこの時計がメインです｡
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